デ1070形(1000系)


1075〜1076 計2両 1974年03月〜1976年07月製造





粟生線3連の増結車として登場した、両運転台車のデ1070形。
両運+片側3扉を確保した事から、扉間2個の間延びした独特の窓配置が特徴です。


【概要】

1970年代の沿線開発に伴い、当時急務であった粟生線の輸送力増強に対応する為に登場しました。
朝夕の3連に本線上で増結・開放を行う必要から、両運転台仕様の高性能車となっています。
性能はデ1050形後期型に準じています。

本線上での連結・解放を短時間で容易に行う必要から、有馬方に自動連結開放装置(連解装置)を設置し、
神戸寄に廻り子式密着連結器を装備した1100系3連と4連を組成(増結車1両+基本編成3両)する
「連解4連運用」に従事していました。




有馬寄に基本編成の1100系3連を連結して4両編成を組成する、連解4連運用の基本形。
前パン姿も相まって、電気機関車が客車を牽引しているような雰囲気も窺えます。




志染でお昼寝中の1073号車。パンタグラフは神戸寄に設置されています。
粟生線における増結車の連結・開放は、当初押部谷で実施されていましたが、後に志染へ変更されています。




1073号車の有馬寄(増結側)を見る。自動連結解放装置(連解装置)を設置し、連結器横の箱には
車両故障時に自連車と連結する為の、中間連結器(アダプター)が格納されています。
増結・解放を短時間で行う為、貫通ホロは設置せず手すりを設置、非常時には連結相手の車両へ
移動できるようになっています。




連解装置を構成する連解スイッチは、増結車の有馬方に設置されています。
 短時間で本線上での連結・開放を容易に行う為、増結車方より簡単な操作で電気・空気配管を含めた
 いわゆる「ワンショット操作」で連結・開放の遠隔操作を可能としています。




基本的に本線上を走るのは志染駅構内での増結(解放)作業時のみでしたが、1980年代前半には
休日ダイヤ連続時の列車検査対応で、志染〜鈴蘭台間を単行回送される姿が時折見られました。
「モノクロームの残像」でも、当時の様子をご紹介しています。

連解車引揚・回送についての詳細は、こちらをご覧ください。
1982年10月(鈴蘭台駅構内)
1983年10月(川池信号所〜木幡)
1983年12月(木幡〜栄)
1984年02月(見津信号所〜押部谷)
1984年05月(藍那〜栄)
1984年09月(西鈴蘭台〜川池信号所)


【改造等】

最終増備車の1076号車は、1000系列車両の冷改試行車として1985年3月に冷改工事を実施、製造当初から
連解5連を組成する予定であったデ1350形1357Fと3連化、連解5連で運用される事となりました。この際に
床下スペースを確保する為SIVを撤去、補助電源は1357Fに依存する形となり、単独走行は不可となります。



最終増備車の1076号車は、同形式で唯一、旧塗装で裾帯が入れられました。写真は1984年09月の姿で
新造されたばかりの1357Fと3連を組成、冷改施工前で連解装置や貫通路の手すりも撤去されていません。

神戸寄の1358号車も連解仕様で、同編成は有馬・神戸寄の双方が連解仕様の面白い編成でした。




デ1350形1357Fの有馬寄に連結され、1359Fと連解5連を組成した1076号車。
(1076-1357-1358+1359-1360) 同車は1000系列初の冷改試行車となりました。


1980年代は乗客の増加に伴って連解運用も4連中心から5連にシフト、増結車の2連化が必要となった事に伴い、
前期車の1071〜1073号車は、片運転台の増結車であるデ1050形(1060・1062・1064)と1986〜87年に
かけてユニット化を実施、パンタ・CPを撤去されました。




1064とユニット化された1073号車。固定化された1071〜1073は専ら連解5連の増結車として
運用されていましたが、ワンマン化以前はデ1350形2連の有馬寄に連結されて、写真のような
非冷房+冷房の混結4連が見られる事もありました。


単車形で残った1074・1075号車は連解4連運用の解消に伴い、1994年7月には両車とも連解装置の撤去を実施、
この結果、2両は非冷房ながら有馬寄・神戸寄のいずれでも増結可能となり、4連運用の不足時に1100系と4連を
組成する際、重宝される存在となりました。



5000系のピンチヒッターとして、1153Fと固定4連を組成した1074号車。
神戸寄の先頭に立つ前パン姿が、かつての連解4連を彷彿させます。




こちらは1100系の有馬寄に増結された非冷房時代の1075号車。現在はトップ写真のように1113Fと
固定4連を組成の上、冷改・ワンマン改造が実施されています。


2001年以降は遅まきながら、1074・1075号車にも冷房化を実施する事となりました。
改造内容は1076に準じていますが、時代の変化に合わせて側面方向幕や車椅子スペースの設置等が行われました。
1074号車は改造後、当初デ1350形1351Fと固定3連を組成していましたが、翌年1月にはワンマン化を実施。
機器設置の関係より有馬方乗務員室が50mm拡張され、後方窓もHゴム支持の固定窓に変更、異彩を放っています。
尚、同様の改造は1075・1076号車にも実施されています。



デ1350形1351Fとワンマン3連を組成していた頃の1074号車。OM3連運用で公園都市線に入線した時の様子です。


  

(左)Hゴム支持の固定窓となった有馬方の乗務員室後方窓(右)先頭車同士連結の為大型の転落防止ホロ。


【固定編成化・冷改工事等施工後の推移】

 車両番号 固定編成化  備考
 1071+1060  1986年10月  2005年1月に編成解除、1119Fと固定5連を組成
 1072+1062  1986年12月  
 1073+1064  1987年03月  


 車両番号  連解装置撤去  冷改施工  ワンマン化  備考
 1074  1994年07月  2001年08月  2002年02月  1351F有馬寄に連結(当初)※1
 1075  1994年07月  2004年08月  2004年08月  1113F有馬寄に連結
 1076  1985年03月  1985年03月  2004年12月  1357F有馬寄に連結(当初)※2

※1)2003年10月に1111F有馬寄へ変更
※2)2000年06月に1153F有馬寄へ変更




2005年1月に1060との2両ユニットを解除、1119Fと変則5連を組んでいた頃の1071号車。
2年後の2007年1月には、非冷房車で初めての新塗装が施されています。


【動向】

2009年3月20日のダイヤ改正にて5連運用が廃止となり、増結車として残っていた2編成(1072F・1073F)は
1062・1064号車とともに運用休止、1119Fと変則固定5連を組んでいた1071も同日より編成解除されました。
1071号車は鈴蘭台車庫、1072・1073号車は見津車庫に長らく留置されていましたが、2010年4月の6003F
増備に伴い3両とも除籍となり、見津車庫で解体されました。



5連運用の廃止に伴い、1119F(右)から編成解除された1071号車(左)
神戸寄の貫通路は種別・行先表示幕が撤去され、前照灯・標識灯も埋められているのが分かります。






2010年3月13日には鈴蘭台車庫に留置されていた1071号車が見津車庫へ回送されています。
1062-1072、1064-1073も部品取りの為一旦鈴蘭台へ引揚の後、再び見津へ。4月には5両とも解体されています。


冷改施工された1074〜1076号車の3両は、いずれも1100系3連の有馬寄に連結され、4連運用に充当される事となりました。
1153Fと4連化された1076号車は、オール3扉の整ったサイドビューを誇っているほか、1074・1075号車は出場時に
客用扉ステップのステンレス化を実施、外観上のちょっとしたアクセントとなりました。




冷改・ワンマン化と4連化工事が完了した1074と1075号車が並ぶ。
連解運用時は基本的に神戸寄に連結されていたデ1070形ですが、現在では全車両が有馬寄に連結。
迫力ある前バン姿は、過去の風物詩となってしまいました。





1076号車は2001年6月のダイヤ改正に備えて一足早く、2000年6月に相方を変更。
冷房用電源供給用のSIV強化改造を実施した1153Fの有馬寄に連結され、オール3扉の固定4連を組成しています。


冷改施工も実施され、安泰・・・と思われた3両ですが、2016年03月には新造車両6500系のデビューに伴い
1111Fと4連を組成していた1074号車が3月10日付で除籍、同年26日には市場の車両搬入基地より
解体業者へ陸送されています。




固定編成化されたとは言え、全国でも希少な両運仕様の高性能車。残された2両の動向が注目されます。



(2009.06.08 1071〜1073運用休止に伴う構成・内容更新)
(2010.05.09 1071〜1073除籍に伴う構成・内容更新)
(2016.05.08 最新動向を反映の上更新)






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