−1993年3月20日・・・800系さよなら運転前日の風景−
いよいよ3月21日のさよなら運転を明日に控えた800系。
前述の通り事前にダイヤも発表されており、臨時普通列車として運転の為乗降も自由に出来ることから、当日は
撮影と最後のお名残乗車も兼ねて計画を立てる事としました。
前日の3月20日(土)、ロケハンを兼ねて粟生線沿線の下見へ。
一週間前に覗いた時、見津車庫に留置されていた800系2編成は既に鈴蘭台車庫へ回送されていました。
明日に備えての準備や検査を受けている頃でしょうか・・・。
連解5連運用の増結車として活躍していたデ300形唯一の貫通形2連311-312は、800系の廃車よりも一足早く、
93年3月15日付で廃車となりました。神戸電鉄の初期高性能車にも、いよいよ淘汰の波が押し寄せてきたのです。
800系の初期車は、正にこの311の車体をモデルとして更新されたのでした。
解体されていく311。神鉄の高性能車として先陣を切り、30年以上の歴史を刻んできた車体にバーナーの火が入る。
真っ黒に登って行く煙が、一瞬311の涙に見えました・・・。
鈴蘭台車庫の洗車線には、明日の晴れ舞台を控えた852Fが最後の洗車中でした。
車庫外周の道路からは、ブラシを握って車体を磨く作業員の方々の会話が手に取る様に聞こえてきます。
「何で今日、この電車洗うことになったん?」
「もう廃車にするらしいで。明日、さよなら運転なんやて」
「ホ〜ッ、もったいないなぁ。まだまだ綺麗やし、走れそうやのになぁ・・・」
「そうやなぁ・・・」
それはまるで、物言わぬ800系の気持ちを語ってくれているかのような会話でした。
私達の気付かないところでいつも電車を綺麗にして、大事に送り出してくれる方々は、実は誰よりも電車の心を良く
理解していらっしゃるのかもしれません。
もうおそらく、ここの洗車線には帰ってくる事のない852F。きっと、美しい姿で最後の勇姿を見せてくれることでしょう。
明日の臨時列車初発は鈴蘭台10:50発の新開地行。各駅停車8510Kでスタートです。
(写真はいずれも93.3.20撮影)