8-1.デ300形
301〜304(4両) 昭和35年8月製造
311〜316(6両) 昭和37年3月〜昭和39年4月製造
平成5年3月〜平成6年9月除籍
湘南形2枚窓に裾を丸く絞り、愛嬌のある顔をしたデ300形。過去から現在までの歴代の神鉄の車両の中で、
一番私のお気に入りの車両です。
既にご存知の通り、昭和35年に製造された神戸電鉄初の高性能車で、その後に製造されたデ1000形等、
神戸電鉄の高性能車の礎となった「名車」です。
車体は当時の流行であった湘南形2枚窓に丸みを持たせた柔らかい車体、車内には固定式クロスシートを
装備。又、初めての自動進段式制御器(三菱製ABF)を採用した他、発電制動には常用の他非常時に過電流
過電圧保護装を無視して停止寸前まで減速する非常電制を装備する等、往時の設計陣の意気込みが随所に
感じられます。
ブレーキは当初在来車がSMEを使用していた事から電制付のセルフラップ式SME-Dを採用しましたが
後に他の高性能車と同様のHSC-Dに改造されました。
台車は近畿車輛製のシュリーレン台車KD-37を採用、乗り心地の良さは引退まで健在でした。
これらの基本設計が後のデ1000形をはじめとする後継車に引継がれ、現在の高性能車の礎となりました。
方向幕設置後の301-302、昭和45年6月の姿です。この翌年に座席をロングシート化、昭和47年には
ブレーキのHSC化と3扉化と大工事を相次いで受ける事となります。
この2連の姿が、当時小学生だった私を「神鉄大好き!」への道へ引きずり込む事となります。
(写真ご提供:松本崇様)
その後の改造を経て301〜304は中間に313〜316を組み込んで4連2本を組成、さらに311-312は
連解装置を設置して増結用2連として運用される事となりました。
(←神戸)
302-313-314-301 304-315-316-303 312-311
貫通型で製造された311〜316(写真は312-311+デ1050形の3連、連解装置設置前の姿)
有馬線末端部での2連運用充当の為、当時既に313-314と4連を組成していた301Fを編成解除、
急遽302-301で2連を組成して運転された、昭和50年4月の貴重な姿です。
(写真ご提供:坂下孝伸様)
4連化後のデ300形4連。中間に貫通型の310番台を組み入れて活躍中の姿です。後に中間運転台を撤去し
立席専用のスペースとなりました。写真は302-313-314-301。
有馬寄のデ300形(301)パンタは偶数車のみの装備です。前面の湘南形2枚窓は明るく、乗務員室も
広々として前方からの展望は非常に良好。近鉄以外でシュリーレン台車を採用していたのは、神鉄と
西鉄ぐらいでしょうか。
奇しくも神鉄デ300形と同様のスタイルを誇り、同様の人生?を歩んだ西鉄1000形も、近車シュリーレン
台車を使用していました。
連解装置を設置して増結用2連となった311-312。写真はデ1050形を神戸寄に連結して3連運用に
就く311F。車体裾帯塗装後の姿です。
新塗装へ変更直前の304F。夕日を浴びて箕谷駅へ到着です。
新塗装化された301F。デ300形の初期車(301〜304)は、意外と新塗装が一番似合う車両でした。
「有馬口-有馬温泉」の方向幕表示も、今では懐かしいものとなりました。
その後も後輩の高性能車と共通運用を組んで活躍してきましたが、老朽化が進んだ事から高性能車の冷改
計画からも対象外とされて5000系の代替新造による置換が決定、晩年は日中の運用からも外される事が
多くなりました。
平成5年3月には800系の全廃に先立ち311-312の2両が廃車、残った301Fと303Fの4連2編成も
翌年6月の5001F・5003Fの新造に伴い運用を離脱、同年7月の鉄道友の会阪神支部の撮影会を最後に
現役を引退。8月23日付で301Fが、9月4日付で303Fが廃車となり、形式消滅となりました。
35年弱の活躍を終え、静かに佇む301Fと303F。廃車を目前にし、何を語っているのでしょうか・・・。
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