1984年(昭和59年)3月の記録

      
           −その2−箱根登山鉄道入生田車庫訪問−




 












  箱根登山初の高性能車クモハ1000形。
  姉妹提携しているスイスのレーティッシェ鉄道に
  ちなみ、「ベルニナ号」の愛称で親しまれています。








       −日本で最急勾配の粘着鉄道:箱根登山鉄道−

       箱根登山鉄道は神奈川県の小田原と、最近は大学駅伝でも知られる観光地・箱根の強羅を結ぶ、全長15.0kmの
       電気鉄道です(他に強羅〜早雲山間1.24kmの鋼索線があります)
       既に皆様がご存知の通り、ラックレール等を使用せずに電車そのもののモーターで急勾配を登る粘着運転では、
       日本最急の80パーミルを誇る文字通りの「登山鉄道」で、箱根湯本〜強羅間8.9kmの標高差は実に553m!
       (ちなみに神戸電鉄の最急勾配50パーミルも、粘着運転では全国で三本の指に入る存在なのです)
       最急半径30mの急カーブに12のトンネルと7本の橋梁、さらに3ヶ所のスイッチバックを駆使して小さな電車は
       「天下の瞼」に挑みます。

       電車自体も勿論完全装備で、全電動車の車両は床下機器がびっしりとつまり、主抵抗器は屋根上に設置されて
       いるのが大きな特徴です。さらにブレーキ装置も空気・電気・手用制動のほか、緊急時にはレール面に制動板を
       圧縮空気で作動させ、摩擦力で車両を停止させるカーポランダムブレーキを全車両の台車に設置しています。

       さらに一般の鉄道ではレールや車輪の磨耗を防ぐ為に軌条に油を塗りますが、箱根登山の場合は空転や逸走の
       危険がある為、車両に水タンクを設置し、散水をしながら走行します。
       箱根湯本等では折り返しの合間に、乗務員が給水作業をする光景も見られます。

       又、新宿から乗り入れてくる小田急線とは軌間が異なる(箱根登山:1435mm、小田急線:1067mm)為、小田原〜
       箱根湯本間の6.1kmは珍しい三線軌条となっている他、電圧も異なる為複電圧仕様となっています。

       このように、普通の鉄道とは一味も二味も違う存在。乗っても見ても、その独特の姿に魅了される事間違いなし!です。
       貴方の中に流れるメロディーは、「箱根の山は天下の瞼〜」それとも、「フニクリ、フニクラ〜」でしょうか?

       今回は、小さな強力(ゴウリキ)達を支える、入生田車庫の様子をお伝えします。
       

       

       小田原駅で出発を待つ112他の2連。本年(平成18年)3月改正より、小田原〜箱根湯本間の営業列車は、小田急からの
       乗り入れ車両に統一される事となり、写真の光景もあとわずかとなります。























  入生田駅を強羅行きの電車が出発。
  三線軌条区間の様子が良く分かりますね。













       


       

       

       事務所で声を掛けると、快く車庫内の見学を許可して頂きました。
       手続を済ませ、構内へ向かいます。モハ2形(108)が、気持ちよさそうに車体をピカピカに洗ってもらっていました。

       

       スポーク形の車輪が鎮座ましましている様子は、いかにも車庫の中!といった感じですね。

       

       この日はあいにく、ベルニナ号クモハ1000形は検査の為車庫でお休み。二両編成を分割して作業が進みます。

       

       

       電車なのにガソリンの給油?いえいえ、前述の散水用水タンクを取外しているところです。
       外された水タンクは、フォークリフトに積まれて手際よく運ばれます。

       

       珍車を発見!後で分かったのですが、台車の入換用に使用されていたム1形。1919年生まれの立派な現役車両です。
       写真では見えにくいですが、集電装置は何とポール!

       

       小田急線からの乗り入れ車、LSEの特急「はこね」がやって来ました。現在は次世代の豪華特急、VSEが活躍して
       いるのばご存知の通りです。



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