秩父太平洋セメントの工場を出発したデキ+ヲキ・ヲキフ20両の鉱石列車。機関車は元松尾鉱業鉄道のデキ100形108で、
      神鉄の三菱製電機701形と似たスタイルです。


     −番外編その4・・・秩父鉄道鉱石列車に初対面!−


     6月のとある週、仕事の関係で急遽東京へ出張する事となりました。関東に住んだ事のない私にとっては、誰が何と言っても
       「おのぼりさん」状態。東京のビル街から遠く見える空を仰ぎつつ、数日間を過ごしました。
      さて、無事仕事も終わったのが金曜日。帰宅予定は土曜日夕方だった為、折角東京まで来たのだから・・・と少し足を伸ばして
      見ることにし、土曜日の日出から行動開始。
      行先は以前より一度訪問して見たかった、秩父鉄道のデキと鉱石列車たちです。

      出発に際しては、相互リンクを頂いている河童アヒル氏のHPや、ネコ・パブリッシングのHP「ホビダス」等より情報を収集。
      後は当日の晴天を願いつつ、日の出と共に作戦開始!です。

      【ご参考】
      河童アヒルのお散歩フォト倶楽部→http://members.jcom.home.ne.jp/cappa-ahiru/
      「ホビダス」レイルマガジン名取編集長のブログ「編集長敬白」
                       →http://www.hobidas.com/blog/rail/natori/archives/2006/06/index.html

      往路はJR高崎線で上野から出発。少し奮発して2階建のグリーン車で一路熊谷を目指します。
      熊谷では一日フリーキップ(1,400円ナリ)を買い求めて秩父線ホームへ。やってきたのは1000系3連の
      何とも懐かしい電車。旧国鉄の高性能車の草分け、元101系です。

      

      秩父の山奥へ向かう鉄道で神鉄の様に急勾配に挑むイメージがありますが、全線にトンネルはなく、意外な事に
      1000系にも抑速ブレーキは装備していません。
      時速80km/h程度の軽快な走りで、車体を揺さぶりながら一路寄居を目指します。


      

      寄居で対向列車2本と、JR八高線からの接続待ちで約6分停車。右に見えるのは東武東上線です。寄居を発車
      すると、それまでの郊外風景は一変し、次第に山に分け入っていきます。


  

(左)デハ1001の製造は昭和36年川崎車両(現在の川崎重工兵庫工場)製。地元神戸で造られた電車にこうして会うのも、
何かの縁でしょうか。
(右)デハ1001の運転室後部。荷物室として使用する為でしょうか、扉一枚分をカーテンで仕切れる様になっていました。


      

      昔は旅客列車よりも貨物の方が多いと言われていた秩父鉄道。交換可能駅が多く、広い構内を持っているのも
      大きな特徴です。構内踏切もあちこちで見られます。
      駅は殆どが有人で古き良き時代の名残を残しており、「自動改札」や「プリペイドカード」と言った道具は、ここでは
      全くの無縁です・・・。


      

      影森に到着。武甲山を背に広いヤードを持った駅で、ここから約1km程の区間に秩父太平洋セメントの工場へ
      伸びる専用線があります。
      写真は三峰口へ向かう西武鉄道からの直通4000系で、右側の白い「セメント街道」が秩父太平洋セメントへの
      専用線です。かつてはこの2本の間に、もう一本引込線が有ったそうですよ。

      勾配は工場を出てすぐ19.5パーミルの下り勾配、さらに写真の地点からは20パーミルの下り片勾配であり、
      鉱石貨車20両を牽くデキにとっても、かなり厳しい区間である事には違いありません。


      

      緑豊かな山々に囲まれた秩父太平洋セメント三輪鉱業所。遮断機より向こう側は工場敷地で立入禁止となっています。


  

影森からの上り勾配を登って鉱石車20両が到着。係員の誘導でデキが切り離され、代わりにこれまた独特の格好をしたDLが
貨車たちを奥へ引っ張って行きます。
35t積のヲキ100形と緩急車のヲキフ100形で、これらの貨車は全て秩父鉄道の所有となっています。

ちなみに、この独特の記号「ヲ」は、鉱石(ore)の意味だそうな。


      

      昔の別府鉄道か飾磨港線の引込線にでもいたような、好ましいスタイルのDL。「D502}の標記が確認出来ます。
      ヲキ達を連結し、エンジンをふかしてDLは踏ん張りますが、何しろ20両の貨車。
      連結時に掛けているブレーキのエアも自然に少なくなる為(4.9kpa程度)、工場へ引込むのも簡単ではありません。
      5m程バックしたと思いきや、白い煙を吹き上げて重力とDLとの勝負です。

      やがて、20両のヲキ達はゆっくりと工場の中へと取り込まれていきました・・・。


      

      入換が終わって工場内にいたヲキ達に連結されたデキは、暫くたってから影森へと向かいます。
      前述の様に同区間は連続約20パーミルの下り片勾配であり、工場を出てすぐに一旦停車の上ブレーキテストを
      行い、ゆっくりと動き出します。


      

      最初は車がサイドブレーキを緩めたように、ユルユルと発車したヲキ達。次第にスピードが速くなり、地響きを立てて
      眼前を通り過ぎていきます。


      

      影森の側線で一旦待機。対向の鉱石列車を待って、20両のヲキを牽くデキは一路三ヶ尻を目指します。
      写真は御花畑駅付近での7006レ。写真左側の線路は、西武線から秩父線への乗入用連絡線です。


      

      

      余りにも有名な荒川上流の上長瀞〜親鼻間。
      運良くこの時間帯は、SL「パレオエクスプレス」とデキ+ヲキの姿を納める事が出来ました。
      列車を待つ間、涼しげな荒川を長瀞下りの船が下って行きます。今度来る時には短パンとゴムぞうりは
      必携ですね!


      

      父の背中で見る貨車たちは、子供の目にどう映っているのでしょうか・・・御花畑にて。


      

      「貨物王国」を誇った東武・西武・秩父の三社ですが、現在では前記2社での営業は廃止されてしまいました。
      秩父での鉱石列車の運転も機動的に対応している様子で、午前中にしっかりと撮影できた今回は運に恵まれた
      ものかもしれません。

      わずか半日程の撮影でしたが、すつかり秩父鉄道のファンになってしまいました。
      今度会えるのは、何時の日だろう・・・。

      折からの不況や海外への生産シフトで、国内のセメント業界は苦境に立たされていますが、是非とも今後の活躍に
      期待したいものです。




                                                                                                                 −TOPへ−

   

inserted by FC2 system